製造業BtoBの直販BtoC参入|OEM企業が自社ブランドを立ち上げ、Shopify・SNS運用に至るまでの全記録

製造業BtoBの直販BtoC参入|OEM企業が自社ブランドを立ち上げ、Shopify・SNS運用に至るまでの全記録
目次

はじめに|BtoB製造業がBtoCへ参入するとき、乗り越えるべき壁とは?

英国羊毛公社のブリティッシュウールの検綿作業
羊毛を丁寧に人の目と手で検綿

長年、OEM(相手先ブランドによる製造)を中心に事業を続けてきた製造業が、自社で開発した商品を「自分たちのブランド」として消費者に届けたい。

そんな思いを持つ企業は少なくありません。

しかし、BtoBを中心としてきた企業がBtoCへ事業領域を広げるには、単に商品をつくってECサイトを開設するだけでは乗り越えられない壁があります。

今回ご紹介するのは、滋賀県長浜市で60年以上にわたり寝具を製造してきた丸三開発株式会社様の事例です。

大手寝具メーカーのOEM製品を中心に製造してきた同社が、自社開発商品の魅力を直接お客様へ届けるため、新しい寝具ブランド「TASOW」を立ち上げました。

LiB.Designは、そのプロジェクトにおいて、ブランドコンセプトや商品名の提案から、ロゴ、ブランドサイト、オンラインストアの構築、そしてSNSでの情報発信まで、一つひとつのフェーズに伴走しています。

この記事では、「TASOW」がどのように生まれ、どのような段階を経てオンライン直販へ進んだのか、その過程をブランディングとマーケティングの視点からご紹介します。

BtoB製造業のBtoC参入で直面する3つの壁

固綿製造の工場内を案内
TASOWの開発責任者 取締役 法戸直輝氏

優れた技術を持つ製造業が自社ブランドを立ち上げ、BtoC市場やD2C(直販)へ参入する際、大きな課題となるのが次の3つです。

  • 既存取引先との関係性をどう守るか:直販を始めることで、既存の小売店や発注元メーカーとの関係悪化や価格破壊を懸念し、踏み切れない。
  • ECサイトをどう構築し、運用するか:Shopifyなどのカートシステムを導入しても、専門用語や設定の複雑さに阻まれ、本業の合間では制作が頓挫する。
  • 商品を知ってもらい、購入につなげる集客をどう行うか:ECサイトを作っただけで満足してしまい、独自の集客施策(SNS・Webマーケティング)が回らず放置される。

どれも、商品そのものをつくる技術とは異なる領域です。

だからこそ、自社の技術力や商品力を活かしながら、ブランド、Web、EC、マーケティングを段階的につないでいく必要があります。

今回のTASOWプロジェクトも、最初から「ECサイトをつくって直販する」という進め方ではありませんでした。

ブランドをつくり、営業ツールとしてWebサイトを整え、市場との接点をつくり、その反応を見ながらオンライン直販へ進んでいく。

一歩ずつ段階を踏んできたプロジェクトです。

「制作して終わり」ではなく、ブランドを育てる伴走型支援

Webサイトやオンラインストアは、公開した瞬間に完成するものではありません。

特に自社ブランドを立ち上げる場合、ブランドそのものがまだ成長途中です。

だからこそ、LiB.Designでは「Webサイトを制作して納品する」だけではなく、事業やブランドの成長段階に合わせて、一緒に考え、必要なものをつくり、次のステップへ進むことを大切にしています。

TASOWも、まさにそのように育ってきたブランドです。

フェーズ1:強みと技術の言語化|提案書「TASOU」からブランド「TASOW」誕生へ

TASOW ロゴ
TASOW ブランドロゴ

60年の歴史と独自技術を、ブランドのコアへ

今回のプロジェクトは、滋賀県長浜市で60年以上にわたり寝具を製造してきた丸三開発株式会社様です。

同社は、大手寝具メーカーのOEM製品を中心に、固綿やシート状の中綿製造などを手がけてきた寝具製造のスペシャリストです。

長年の製造経験に加え、固綿やシート状の中綿製造について特許を取得するなど、技術力と生産力を培ってきました。

今回、新しく開発されたマットレスは、長年の技術開発により考案された最適な「多層」構造を実現。自社製造の固綿、提携企業と開発をした織物クッション材、英国羊毛公社から仕入れているブリティッシュウールの3層構造となっています。側生地は肌触りがよく通気性に優れた綿100%のガーゼ。丸三開発様の技術を結集した商品です。

最初にいただいたご相談は、この新商品のWebサイト制作でした。

しかし、ヒアリングを進める中で見えてきたのは、単に商品の特徴を紹介するWebサイトをつくるのではなく、

「この商品を、これから自分たちのブランドとして育てていきたい」という思いでした。

そこで、商品そのものの特徴だけではなく、企業が長年培ってきた技術や素材へのこだわりを、ブランドの核として整理していくことになりました。

「TASOU」から「TASOW」へ、ネーミング・ロゴデザイン開発

プロジェクトの初期段階では、商品の「多層」という特徴から、商品名として「TASOU」という名前が提案されていました。

そこで、企画書をもとにブランド全体の展開を考えたとき、LiB.Designから提案したのが「TASOW」という名称です。

「U」を「W」に変えることで、文字としての視覚的な印象を強める。

さらに「W」にすることで、素材として使用している「Wool(ウール)」のニュアンスも込めました。

ブランドの特徴を一つの名前の中に少しずつ重ねています。

キャッチコピーには、

「ヒツジと眠る・多層でささえる」

という言葉を設定。

「ウール」と「多層」という、この商品の大きな特徴を、できるだけ分かりやすく表現しました。

技術を、視覚的に伝えるロゴデザイン

TASOW ロゴ 白黒バージョン
TASOWロゴ 白黒バージョン

ブランド名が決まった後は、ロゴデザインへ。

ロゴには、何層もの素材が重なっていくイメージを込めています。

デザインの中には「W」の文字が浮かび、今後、多層技術を活用してさまざまな商品へ展開していく可能性も意識しました。

また、直線ではなく少しふわふわとした不規則な線によって、羊毛の柔らかさも表現しています。

英国から羊毛を直接仕入れ、自社の技術でウールをシート状に加工し、それを何層にも重ねる。

この独自の技術こそが、TASOWというブランドの大きな強みです。

こうして、プロジェクトは「新商品のWebサイト制作」から、「自社ブランドをつくる」という取り組みへと変わっていきました。

フェーズ2:既存取引先との関係性を丁寧に進めた「段階的アプローチ」

TASOWブランドサイト
STUDIO ブランドサイト オンラインストアに統合

BtoB製造業が自社商品を直販しようとする際、最大の課題となるのが「既存の発注元メーカーや取引先との関係性」です。

いきなり直販しない。まずは営業ツールとしてブランドサイトをつくる

自社ブランドを立ち上げたからといって、すぐにオンラインストアを開設し、一般消費者へ直接販売すればよいとは限りません。

特にOEMを中心としてきた製造業の場合、これまで取引してきたメーカーや小売店との関係性があります。

自社商品を直接販売することで、既存の取引先と競合する可能性もあります。

そのため、TASOWでは最初からオンライン販売を行うのではなく、まずは「販売先への営業ツール」としてのブランドサイトを制作しました。

商品を詳しく紹介できるカタログのようなWebサイトです。

また、サイト上では一見してメーカー名が前面に出るのではなく、「TASOW」という新しいブランドそのものを見せることを重視しました。

これは、既存の事業との関係性を考えながら、自社ブランドが市場でどのように受け入れられるのかを確認していくための、段階的なアプローチでもありました。

ブランド立ち上げでは「何をするか」だけでなく「いつするか」も重要

自社ブランド化というと、

「ブランド名を決める」
「ロゴをつくる」
「Webサイトをつくる」
「ECサイトをつくる」

という制作物に目が向きがちです。

しかし、実際にはそれだけではありません。

既存の取引先との関係をどうするのか。

どのタイミングで一般消費者に販売するのか。

まずは営業ツールとして使うのか、それとも最初からECまで進めるのか。

こうした「順番」を考えることも、ブランド立ち上げには欠かせません。

TASOWでは、まずブランドとしての存在をつくり、営業活動を通して市場との接点をつくるところから始めました。

フェーズ3:信頼構築からShopify直販(D2C)へのシフト

滋賀県長浜市ふるさと納税返礼品「多層構造マットレス」
滋賀県長浜市のふるさと納税返礼品として採択

「ふるさと納税返礼品」への採択が、次のステップへのきっかけに

TASOWの認知を広げていく中で、大きな転機となったのが、滋賀県長浜市のふるさと納税返礼品への採択でした。

自治体のふるさと納税を通じて、TASOWの商品を知ってもらう機会が生まれます。

そして、返礼品として紹介されるだけではなく、「通常の商品としても購入できるようにしたい」という次の課題が見えてきました。

ここから、自社でオンラインストアを構築し、定価で商品を販売するというステップへ進むことになります。

ShopifyでのEC構築に挑戦。しかし、制作は思うように進まなかった

ECサイト構築プラットフォーム 

オンラインストアの構築には、Shopifyが選ばれました。

Shopifyにはデザインテンプレートが用意されており、制作方法を学べるコンテンツも数多くあります。

そこで、まずは社内でオンラインストアをつくることに挑戦されました。

担当者の方が講座を受講し、Shopifyのアカウントを設定。

そしてデザインテンプレートの編集へ進みました。

ところが、実際に作業を始めてみると、専門用語や細かな設定が多く、一つひとつの作業に一定の知識が必要になります。

本来の業務を抱えながらECサイト制作を進めるため、思うように作業が進みません。

最終的に、「オンラインストア構築をお願いしたい」と、再びLiB.Designへご相談いただくことになりました。

ECサイトは「つくる」だけでも専門性が必要

ECサイトは、一般的なWebサイトとは異なり、商品情報、決済、配送、購入導線など、さまざまな要素を設定する必要があります。

Shopifyのようなサービスは、自社でECサイトを構築できる環境が整っています。

一方で、「自分でできる」ことと、「本業と並行して効率よく構築できる」ことは別の問題です。

EC構築は、一つの専門性を持った技術職の仕事を、通常業務の中に追加するようなもの。

担当者の興味や関心が高くても、日常業務との両立には時間と労力がかかります。

だからこそ、必要な部分を専門家に任せるという選択肢があります。

ブランドサイトとオンラインストアを統合する

社内で構築を始めたオンラインストアをLiB.Designで引継ぎ、構築し、公開まで進めました。しかし、ここで終わりではありません。

TASOWでは、別々に存在することになったブランドサイトとオンラインストアを、一つのサイトへ統合することになりました。

オンラインストアを公開することだけを考えれば、サイトを分けたままでも運営できます。

しかし、その後の集客やマーケティングを考えると、商品を購入するための入り口を一つに集約する方がユーザーの方の導線、サイトの回遊も分かりやすくなります。

そこで、

  • 商品の詳しい情報をECサイトに掲載する
  • ECサイトでもブランドの世界観を伝える
  • ブランド認知から商品購入へ自然につなげる
  • Webサイトへのアクセスを一箇所に集める

という考え方で、ブランドサイトとオンラインストアを統合しました。

もともとは営業ツールとして始まったブランドサイト。そのコンテンツが、今度は「直接購入してもらうための入り口」へと役割を変えていったのです。

フェーズ4:EC公開はスタートライン|WebマーケティングとSNS運用の伴走支援

TASOW Instagram
TASOW Instagram

オンラインストアは、完成して公開しただけでは誰も訪れてくれません。特にShopifyのようなASP型カートは、自発的な集客施策が不可欠です。

「作っても売れない」を防ぐ。EC公開後に必要なのは集客

オンラインストアが完成すると、つい「これで販売が始められる」と思ってしまいます。

しかし、ECサイトは公開しただけでは、お客様は来てくれません。特にShopifyのような独自ECの場合、自社で集客を行い、商品を知ってもらう必要があります。

検索、SNS、広告、コンテンツなど、さまざまな接点からオンラインストアへお客様を呼び込む仕組みが必要になります。

つまり、

ECサイトの構築はゴールではなく、集客のスタートラインです。

TASOWでも、オンラインストアとブランドサイトの統合を終えたところから、次の課題としてWebマーケティングに取り組むことになりました。

Instagram運用を「露出」から「ブランドと購入」につなげる

もう一つの課題がSNSでした。

それまで社内で運用されていたInstagramでは、製造工程を丁寧に紹介するリール動画なども制作されていました。

動画そのものが見られることはあっても、商品の魅力やブランドとの関係性が十分に伝わらず、オンラインストアへの導線としては十分に機能していない状態でした。

SNSでは、単に「見てもらう」ことだけを目的にするのではなく、

「この商品を知る」
↓
「ブランドに興味を持つ」
↓
「商品について詳しく知る」
↓
「オンラインストアを見る」
↓
「購入を検討する」

という流れを意識することが重要です。

現在、Instagramでは、ブランドの世界観や商品の魅力を伝えながら、オンラインストアへ自然につながる情報発信へと改善していく取り組みを進めています。

また、カタログ的な見せ方のままのオンラインストアも、より商品の魅力を伝え、ユーザーの方のお悩み、探している商品に直ぐにたどり着けるサイトへとゆっくりとバージョンアップしていく計画です。

自社ブランドは、Webサイトを公開しただけでは完成しない

TASOWは、まだ生まれたばかりのブランドです。

オンラインストアもSNSも、これから育てていく段階にあります。

だからこそ、LiB.Designが大切にしているのが「伴走」です。

ブランドコンセプトを考える。

名前をつける。

ロゴをつくる。

Webサイトをつくる。

ECサイトをつくる。

そして、公開した後に、お客様に知ってもらう。

一つの施策が終われば、また次の課題が見えてきます。

ブランドを育てるということは、その繰り返しです。

TASOWについても、オンラインストアの公開をゴールとは考えていません。

ここからお客様に知っていただき、実際に商品を使っていただき、愛用していただけるブランドへ育てていく。

その過程にも、引き続き伴走していきたいと考えています。

最後に|TASOWの商品を実際に使ってみて

TASOW ウールケット
スタッフが愛用する TASOWのウールケット

TASOWのブランドサイト制作が始まった頃から、LiB.Designのスタッフも実際に商品を使用させていただいております。

スタッフみんながTASOWを気に入っている理由の一つが、その寝心地です。

敷布団「TASOWマットレス」は、自社開発の固綿と、提携企業(福井県永平寺)の織物クッション材による独自の2層構造。薄く軽やかでありながら身体をしっかりと支え、その寝心地はまるで「一流ホテルのベッド」のようです。

吸湿性に優れた英国羊毛(ウール)の機能を損なうことなく側生地に使用された2重ガーゼで蒸れにくく、パーツごとに解体して洗えるお手入れのしやすさも兼ね備えています。「ものづくりの本質的な価値」が詰まった商品、だからこそ、私たち自身も自信を持っておすすめしています。

同じ素材の多層技術で作られた敷パッドや、一年を通して使えるウールケットも展開しています。どれも、寝具メーカーが本気でお客様の快適な睡眠を考えて開発された商品です。多くの方に知ってもらえるように、引き続き伴走支援をさせていただきたいと思います。

まとめ|自社技術を「ブランド」に変え、直接お客様へ届ける

TASOWというブランドは、最初から完成された形で生まれたわけではありません。

「多層」という一つの技術的な特徴から始まり、

技術の言語化
↓
ブランド名の開発
↓
ロゴデザイン
↓
ブランドサイト
↓
営業ツールとしての活用
↓
ふるさと納税への採択
↓
オンラインストア構築
↓
ブランドサイトとの統合
↓
SNS・Webマーケティング

というように、一つずつ形を変えながら育ってきました。

これは、BtoBを中心としてきた製造業が、いきなりBtoC企業へ変わったという話ではありません。

長年培ってきた「つくる力」を、自分たちのブランドとして「伝える力」「届ける力」へ広げていくプロセスだったのだと思います。

そして、オンラインストアの完成はTASOWにとってのゴールではありません。

むしろ、ここからがブランドを育てていく本当のスタートです。

丸三開発株式会社様の自社商品ブランド「TASOW」のオンラインストアはこちら >>

自社商品を「ブランド」として直接お客様に届けたい方へ

LiB.Design メンバー
LiB.Designが伴走します

「長年培ってきた技術を、自社ブランドとして展開したい」

「OEM中心の事業から、自社商品の販売にも挑戦したい」

「ブランドを立ち上げたいが、何から始めればいいかわからない」

「ECサイトをつくったものの、集客や運用まで手が回らない」

「Webサイト、EC、SNSを別々に考えるのではなく、一つのブランドとして整えたい」

もしこのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度お話をお聞かせください。

LiB.Designは、単にWebサイトを制作するだけではなく、

「何を伝えるのか」
「誰に届けるのか」
「どのようにブランドとして育てていくのか」

を一緒に考えながら、事業の段階に合わせてWeb・ブランド・マーケティングを支援します。

自社の技術や商品に込めてきた想いを、まだ見ぬお客様へ。

その一歩を、私たちと一緒に考えてみませんか。

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この記事を書いた人

「らしさを紡ぎ、ブランドに仕立てる」を掲げ、中小企業のブランディングとWeb制作を支援。国家資格キャリアコンサルタント2級技能士、コーチングを活かした独自のヒアリングで強みを引き出し、長く愛される資産としてのブランド構築をプロデュース。作って終わりにしない、担当者の成長まで見据えた伴走支援が強み。

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